清宮幸太郎を誰が育てるのか

 1992年のドラフト会議。

 

 世間の注目は一人の高校生に集まっていました。夏の甲子園2回戦で、5打席連続敬遠により敗れた石川県星陵高校の強打者松井秀喜。5打席連続敬遠という前例がない作戦は、社会問題まで発展すると同時に松井秀喜の価値を上げ、ドラフトの最注目候補になりました。

 

 11月のドラフト会議では、4球団から1位指名を受け、巨人の長嶋茂雄新監督がくじを引き当てました。ミスタープロ野球の強運。長嶋茂雄松井秀喜の出会い、その運命的なドラフトは球史に残る名場面となりました。

 

 ここから長嶋監督と松井の師弟関係が始まります。しかし、松井はオープン戦ではまるでだめで、三振ばかりしていました。当時チームメイトだった清原は「心配になるほどだった」と後に振り返っています。

 

 松井秀喜の背番号「55」と言えば、2009年にドラフト1位で巨人に入団した大田泰示に引き継がれました。大田も松井に引けを取らない逸材でしたが、松井と大田ではその後の運命がかなり変わってしまいました。

 

 松井が球史に残る活躍をし、ヤンキースではワールドシリーズMVPまで獲得できたのは、長嶋茂雄という師匠がいたからに違いありません。スーパースターを育てられるのはスーパースターだけ。特に巨人の四番という特殊なポジションを育てるには、それだけの経験が必要なのだと思います。

 

 さて、今年のドラフト注目株といえば、早稲田実業スラッガー清宮幸太郎です。高校の通算本塁打数で歴代No1の記録を打ち立てました。しかし、守備は難ありで一塁専なうえに上手くありません。彼は一流の大打者になれるのでしょうか。それとも、その才能を開花させることができずに終えるのでしょうか。

 

 プロ野球再編問題以降、プロ球団は変わりました。どの球団のファンサービスに熱心になり、ファンと向き合うようになりました。また、ソフトバンク楽天DeNAなどIT企業が次々に参入し、卓越したマーケティング戦略を発揮。ベイスターズを数年で黒字化させた池田元球団社長は「勝敗に関係なく楽しんで貰わなければならない」を信条に、チケットが即完売する人気球団に仕立て上げました。

 

 こうしたマーケティング戦略やイベントなどの開催は確かに効果があります。しかし、プロ野球人気を根底で支えているのは、今も昔もスター選手だと思います。いま、野球界のOBたちは少年野球の指導に力を入れています。少しでも子どもたちに野球をやってもらい、未来のスターを育てる。これが本当に重要なことです。

 

 清宮ほどの逸材を育てることができるか否かは非常に重要な問題だと思います。

 

 かつての長嶋監督のように、清宮を育てられるだけの指導者がいまのプロ野球にいるでしょうか。僕は、阪神の掛布二軍監督くらいしか思いつきません。掛布は一流の実績がある一方で、賢さもあります。だから、暗黒時代の阪神の監督は決して引き受けませんでした。やれば、潰されるのが分かっていたんじゃないかなと思います。そういう大人の判断ができる経験。打撃論も大事ですが、清宮のようなメディアの注目を集める選手を育てるには、そういったキャリアが必要です。

 

 「清原が入ったときの監督って確か、森だよね?俺は森に言ったことがあるんだ。お前が悪いって。ちゃんと教育せんからだ。…王の記録を破らせるのは清原しかいかなった。惜しい。左の王、右の清原になれたのにね」

 

 野村監督は、清原を引き合いに出し、有望な選手の教育がいかに必要かを語っています。清宮もまた、バレンティンの60本を超えるだけの可能性を秘めています。

 

 人は、かつて自分が親や恩師、先輩にしていただいたことを後進にする義務があると思います。また、自分がしてもらえなかったとしても、して欲しかったことをしてあげることも大切だと思います。

 

 いち野球ファンの僕の個人的な願望として、やっぱり中田翔は清原に育てて欲しかった。中田は日本代表で四番を打つこともありますが、30本塁打を超えたのは2015年の1年しかありません。今年は絶不調の山田哲人をさらに下回る12本のホームランしか打っていません。清原は、中田がプロ入りしたとき、そのキャラクターや才能を大変買っていて、気に入っていました。番長キャラをやったり、入れ墨など入れず、もちろん覚せい剤などせず、中田を育てて欲しかった。

 

 清宮についても、同じように思います。僕はヤクルトファンですが、それでも松井に育てて欲しい。松井にしかできないことがあります。高校生の頃から注目され続け、巨人の主砲として毎日すごい数のメディアを相手にしていた松井にしか清宮レベルの選手は大成させられないんじゃないかと思います。

 

 松井はなんで巨人の監督にならないのでしょうか。ヤンキースの仕事は引き受けても、巨人の仕事はやらない。それは、巨人に問題があるのでは。かつてプロ野球は巨人だけが人気がありましたが、近年ではその様相はだいぶ変わりました。地上波放送は減少し、神宮でも巨人戦よりカープ戦やDeNA戦の方がお客さんが入ります。巨人は、変わりゆく時代のなかで、古い体制から脱逆できずに彷徨っているように見えます。

 

 清宮が一流の選手になるのは、良い指導者と出会う必要があります。それは、野球界が取り組まなければいけないことでもあるし、清宮自身が自ら引き寄せなければいけないことでもあります。彼がどういう道を進んでいくのか、見守っていきたいと思います。

 

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